「ハーモニーの幸せ」読了

ハーモニーの幸せ
ハーモニーの幸せ
posted with amazlet on 06.09.26
田口 ランディ
角川書店 (2002/08)
売り上げランキング: 327,521
おすすめ度の平均: 5
5 素直な本。
 読んでて、「ん、ここは堪えないと涙が止まらなくなるかも…」というところが何箇所かあった。思い返してみるとそうした言葉は、今まで心の内に密かに渇望してきても、誰にも言われたことのない言葉だったりする。あと、

 自分とはなんなのか、と必死になって考え、哲学や心理学やらを勉強してはいたけれど、正直なところ全くわかっていなかった。今にして思えば「問いのたて方」そのものが間違っていたのだと思う。「本当の自分とは何なのか」と自らに問いながら、私が知りたかったのは「今はまだ発見されていないけれど実は他人からすばらしい評価を受けるに値する自分」の存在であった。
 つまり、「こんな評価の低いダメな自分は本当の自分ではない」と思い、そして「本当の自分=評価される自分」を見つけるために当時流行し始めた精神世界をさまよっていたのだ。
 だから、私が探している「本当の自分」は、断じて今の自分より劣ってはいないのだった。今の自分よりさらにグレードアップした自分こそ、本当の自分であると盲目的に確信していた。(P.284より)

 これを読んだとき、あまりの該当っぷりにドキリとしてしまった。高校のころ、実際そんな理由で心理学を勉強してたし。しかも今は、建前の「自分探し」すらないし(とうに諦めた)。「自分はダメ男ですから」と卑下するのも、恐らく表裏一体なのだと思う。だが、ここで「悟って」しまっていいのだろうか。そりゃあ、「聖人」のような人間が尊敬され、好かれるのは当たり前の話だ。だが恐らく彼女は、そうした人間と自分を対比して「自分、まだまだっす!」とある種の憧れを持ちつつ、煩悩の渦に巻き込まれながら七転八倒、試行錯誤する姿に「生」の奥深さ、素晴らしさを見ているのだろう。同じように、煩悩に巻き込まれ、悩む自分に「生」を感じ、喜ばねばならない。
 …、他、なんか書きたい気もあったけど、永瀬清子のこの言葉によってこのエントリを断つことにする。

そしてそれらの願いのすべてはわが貧しさわが幼さに基づいている。