「三文オペラ」読了

三文オペラ
三文オペラ
posted with amazlet on 06.05.25
ベルトルト・ブレヒト 岩淵 達治
岩波書店 (2006/01)
売り上げランキング: 125,675
おすすめ度の平均: 4
4 ワイマール時代終焉の悪漢戯曲
 あの有名なジャズスタンダードの「Mack The Knife」を生み出した劇だ。内容ははっきり言ってしょうもないけど、その滑稽さの極みの裏で政治批判なんかを鋭くやってる感じ。
 個人的には、物語よりも、そのコンセプトノートというべき覚書の方が示唆に富んでいて読み応えがあった。例えば「俳優のためのヒント」という項目で

 題材を伝達する際には、観客に感情同化の道を歩ませるように仕組んではならない。(中略)俳優は、「役になりきってしまう」より、自分の表現する人物について物語るようにすべきである。

 なんかは特に印象に残った。他にも、歌い方についてアドバイスがあったりするけど、それはこの劇の異化効果による演出の一部なので、特に取り上げない。
 そうそう、「Mack The Knife」はよく「モリタート」という名前で取り上げられるけど、この本ではそれは「殺人物語大道歌」のルビになっている。どうやら、この物語の主要人物であるメッキースのような大悪党について歌っているものを「モリタート」と呼ぶみたい。興味があるなら、歌詞は一度読んで見たほうがいいと思う。あの軽快なメロディでこんなこと歌ってるのかよ!という気分になること間違いなし。