「変身/断食芸人」読了
なんだこの読後感…。グレゴールはさながらトリックスターか。読み始めてすぐに結末は予測がついたが、ここまで徹底的に突き放されるとは…。でも一方で感じたのは、あそこで毒虫に変わり、徹底的に問題を表面化させ、そして(自分以外は)関係が完全に修復され、自分は醜い姿のまま息絶えるってのは、彼をトリックスターだと捉えると、とてもしっくりくる話になる。現実には、肉親ですら避けるような醜い姿に変われる筈などないし、人間は本能的には生を望んでしまうもの。どこまでも泥沼に嵌りながら、表面化しない問題をくすぶらせ続けながら生きるしかない。果たして、自分はいつ「毒虫」に変われるのだろうか、と妙なことを考えてしまった。